こんにちは、呑もかな通信運営部です! 焼酎、泡盛の回と言葉だけは登場していた麹(こうじ)。実は麹は日本のお酒を造るのに欠かせない菌なのです。第10回呑もかな通信は、そんな麹の種類について見ていきます!
目次
はじめに
日本酒好きな方でしたら、「一麹、二酛、三造り」という言葉を聞いたことがあるという方もいらっしゃるのでないでしょうか。これは日本酒造りにおいて重要となる要素を示しており、初めに来る「麹」は一番重要であると言われています。実は、麹は日本酒だけでなく焼酎造り・泡盛造りにおいても重要な役割を果たしています。
麹は実は、「黄麹」「黒麹」「白麹」の3色の分類がされていることをご存知ですか。今回は、日本のお酒造りに欠かせない麹について、色の違いごとの特徴をご紹介します。
麹とは
麹
麹とは、穀物など(デンプン質)に麹菌を繁殖させたものです。麹菌は国菌と言われており、カビの一種です。お酒造りにだけではなく、味噌や醤油にも使われる麹菌は、日本を代表する国菌として認定されています。古来より、日本の食文化に深く根付き、豊かな日本食の醸成に貢献してきた菌なのです。
麹の役割
①でんぷんの糖化
酒造りにおいて、原料である穀物からお酒を作るためには、発酵によって糖をアルコールに変化させないといけません。ですが、米・麦・芋などお酒の原料になる穀物の主成分はデンプンです。麹菌は穀物に含まれているデンプンを分解し、ブドウ糖に変化します。ブドウ糖が酵母と合わさることで、炭酸ガスとアルコールを作ります。麹菌が、穀物のデンプンを糖に変える働きを糖化といいます。
穀物(でんぷん)+ 麴菌 = ブドウ糖
ブドウ糖 + 酵母 = 炭酸ガス + アルコール
②焼酎での役割 ークエン酸を出すー
麹から分泌されたクエン酸が雑菌の繁殖を防ぎ、気温の高い九州でももろみが腐らず、安全に発酵することができます。
③日本酒での役割 ー旨味ー
麹菌は「たんぱく質分解酵素」も持っています。お米のたんぱく質を分解してアミノ酸を生成します。このアミノ酸が、日本酒の深いコクや香りのもとになります。麹菌は、米から旨味やコク、豊かな香りを引き出す重要な役割も果たしています。
お酒造りにおける麹
日本酒を作る際の麹は黄麴、泡盛を作る際は黒麴と決まっていますが、焼酎は時代とともに黄色麹→黒麴→白麹と変わっていきます。麴の特徴と焼酎で使われた麹の変遷を見ていきます。
麹の種類
黄麹
黄麹菌は、味噌やお酢、味醂(みりん)にも使用され、今も日本酒用として用いられています。実は、1910年までは焼酎にも使われていました。というのも、当時は黄麹しかなかったからです。
しかし、黄麹はクエン酸を造らないため、雑菌に対して弱く、品質管理が困難でした。九州は気温が高く、雑菌が繁殖しやすい環境にある焼酎作りには向いていませんでした。黄麹を使って日本酒を作る場合でも徹底した雑菌対策を行った上で低温管理を必要とします。
現在では技術が発達し、この黄麹で造られた焼酎もあり、華やかでフルーティな香りが特徴です。口当たりもあっさりとして、日本酒特有の吟醸香もあり、焼酎が苦手な方にもおススメです。
黒麴菌
泡盛は黒麴菌が用いられます。明治後期に、「焼酎の父」と言われる河内源一郎が、鹿児島よりも暑い沖縄で造られている泡盛にヒントを求めて黒麹の分離に成功しました。
黒麹菌は、黄麹菌と比べるとデンプンの分解力は弱いですが、タンパク質の分解力が強く、クエン酸を沢山つくることができます。発酵中に酸を多く作るので、雑菌を抑えるため、南九州や沖縄のように一年を通して温暖な気候と相性が良かったのです。こうして、大正年間には九州の焼酎も、泡盛と同様に黒麹が主流になります。
しかし、この黒麹を使うと、従来の黄色麹で作っていた焼酎とは風味が変わり、野性味ある辛口のものが多かったようです。芳醇な香りと、どっしりしたコクと旨味が特徴です。
白麴菌
白麴菌は、黒麹菌の突然変異株とされてます。大正13年のある日、河内は黒麹の培養中に突然変異でできた白い麹を発見します。黒麴を使って作る焼酎はどうしても野性味ある辛口になり飲む人を選ぶため、河内が万人受けする焼酎を作れないかと研究を続けた成果でした。現在では、白麴は多くの焼酎に用いられます。
黒麹菌は胞子が飛ぶと服などが黒くなりますが、白麴菌はそれが無いぶん扱いやすく現場向きと言われてます。白麹の特徴として黒麹よりも糖化能力に優れている点があります。黒麹菌同様にクエン酸を作り、更に原料の風味を活かした優しくマイルドでスッキリとした味わいが特徴です。
麴の種類 | 用いられるお酒 | 特徴 |
黄麹 | 主に清酒 | 酸が少ないため、管理が難しい、フルーティ |
黒麴 | 主に泡盛 | 酸が多め、野性的で辛口 |
白麹 | 主に焼酎 | 酸が多めかつ糖化能力優れ甘口でソフト |
焼酎に使われる麹菌は時代とともに変化してきたことがわかりました。また、麹によって特徴があり、それが味わいに直結しているのですね。また、最近は黒麴や白麹を使用した日本酒も作られていますし、黄麹や黒麴を使用した焼酎もあります。可能性は無限大ですね。
まとめ
焼酎の名前で「黒霧島」や、「白霧島」とあるのは、実はこの麹の違いからきているようです。ラベルの色からも、麹の違いがわかるようになっていたとは、焼酎にとって麹菌が異なると味わいも変わってくることを表していますね。これからは、名前や、瓶のラベルにもっと注意していきたいと思います!